華道家 新保逍滄

2017年8月9日

一日一華:いけ花上達のコツ(2)


いけ花上達のコツについて再び。
第1回目は以下でした。
https://ikebana-shoso.blogspot.com.au/2017/02/blog-post_8.html

結論から始めれば、要は瞬発力と持久力ということだと思います。

第1回目に書いたことは、瞬発力について、ということになるでしょう。
1回1回の作品制作に際し、全力投球する集中力、瞬発力。
そして、そうした訓練を長く、何年も継続させる持久力。
陸上競技の短距離と長距離、それぞれに求められる力が必要なのだと思います。

それはそうなのですが、
外国人に教えるということでは、やはり独特の苦労があります。
前回、学ぶ態度の違いということを書きました。

結局、同じことなのでしょうが、手強い生徒が何人かいます。

多少下手でも、個人で楽しんでいこうという方ならそれでいいと思います。
私の指導もそれ相応で。

ところが、自分は指導者を目指す、とか、
いけ花をデザインの仕事に生かすのだ、とか、
とても動機が強い生徒の場合、きちんと学んで欲しいなあと思います。

すると、私も厳しくなるのですね。
となると、日本人ではありえないような指導上の難しさに直面することになります。

何でしょう、彼らのあの作品の独特のクセは?

説明が難しいのですが、私の日本人の生徒の場合、作品がとても洗練された感じがします。
弱点も見つけやすいですし、指導も楽。
自分の伝えたいことが、すっと受け取ってもらえていると感じることが多いです。

ところが、一部の(1割ほどですから、大したことではないのですが)外国人には、何度注意しても直らない特徴があります。生徒作品は、次のフェースブック上で紹介していますので、ご参照下さい。https://www.facebook.com/IkebanaGallery/

作品がうるさいのです。
色使いに品がないのです。
ただ強いだけ、繊細さがないのです。
あるいは、力がこもっていないこともあります。

これは、文化の違いなのだろうか、と思うことがあります。
美意識の違い、なのかもしれないです。

ある生徒は、くねくねした枝物をよく持ってきます。前回は梅でした。
確かに、素材は綺麗。それらをてんこ盛りにした上、足元を赤と白の椿で埋め尽くします。
初年度の生徒ならともかく、2、3年やっている生徒がこんなことでは!
と、珍しく腹が立ちます。
いけばなを教えて腹がたつなんて本当に珍しいこと。

椿を全部撤去しろ。
枝をもっと切り取れ、と。
もちろん、そんなに厳しくは言えないです。
怒りを隠して、やんわりと諭します。

しかし、
素直には従ってくれません。
テキストのサンプルはこうなっているとか、
枝のここが一番美しいのにとか。
自作を正当化します。

それに、理屈で対抗していかなければいけません。
こうなると、教えるのは楽ではありません。
時に、理屈で説明できなくても、ダメと感じることがありますし。
「ダメなものはダメだ!」と言いたくなりますが、
それで納得する相手ではないのです。

綺麗な素材を使っているのですから、
確かに、綺麗ではあります。

でも、生け花が目指す美しさは、もっと別のものです。

たとえば、ありふれた花材でも、雑草でも、
素材を組み合わせ、デザインする。
そこから美しさが生まれるのです。
美しさは、素材から直接生まれるのではなく、
作者が作り出すものです。

素材発の美しさではなく、作者発の美しさ。
それが生け花の美しさなのです。

学ぶ態度に謙虚さがないならば、徒労だろうな、とか、
下手で傲慢な師範を育てるよりは、やめてもらったほうがありがたいとか、
思い悩むことはありますが、
長く、忍耐を持って続けてくれれば、
いつか身につけてくれるのだろうと信じつつ。

そして、また、大部分の生徒はきちんと育っているじゃないか、
と自分を鼓舞してみたり。

結局のところ、伸びるか、伸びないか、
その違いは学ぶ態度にあるとよく思います。

ふと気付いたのですが、伸びる生徒はアジア系の生徒に多いようです。
それは師の教えを大切にしようという、儒教的な文化の影響でしょうか。
先生に反駁したりすることもないですね。
先生からするととても教え易い。
生け花などの芸事にはそうした態度が重要なのだろうと思います。

ところが、上下関係よりも横の関係を重視する文化圏出身の生徒の場合、
上記の通り、独特の苦労があるわけです。
教えにくい生徒はなかなか上達してくれません。

生け花の教師ほど楽しい仕事はないといつも皆に言っています。
それでも、瑣末な苦労があるのですね。

Shoso Shimbo

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